ジェンダー平等と多様性 〜 婚活現場に残る古い価値観
コロナ感染拡大の真っ只中で行われたオリンピック・パラリンピックも9月5日にすべての幕を閉じました。五輪基本コンセプトのひとつに「多様性と調和」がありました。
多様性と調和・・注目すべき大きなテーマですが、国境がなく人種的にも均質であり、同一言語を話すこの日本で、ジェンダー平等と多様性という概念が根付くにはまだまだ道のりは遠いのではないでしょうか。人と同じであることを良しとする国民性なのです。
五輪開催前、要職に就く関係者の方々に多くの失言が見られました。次々と反省の声を上げられましたが、そこに真に多様性への深い理解があったのかどうかわかりません。多様性という概念を身をもって体感するには時間がかかることだと思います。
私共が運営している結婚相談所業界の現場においても、依然古い価値観や結婚観が幅を利かせており、ジェンダー平等や多様性が浸透しているとはとても言い難いのが実情です。いまや、ほとんどの女性が経済的にも自立し、それなりの収入を得て責任ある仕事を持っているにもかかわらず、「夫は仕事、妻は家庭」「結婚するなら男性のほうが年収が上でなければならない」といった結婚観をお持ちの方も少なくありません。
いまだに女性は女性らしく家庭的であるべき、男性は男らしくリーダーシップを持って家族を養う・・昭和時代に育った親御さんの価値観が、平成生まれの婚活世代に脈々と受け継がれています。古い価値観や男女格差の中で育った家庭環境で徹底的に刷り込まれています。この婚活世代の価値観、男女格差の感覚が、まだまだ今の日本人の平均なのではないかと感じます。
マスコミなどが先行し、CMなどにもジェンダー平等をテーマにしているものも多く見られるようになりました。五輪をきっかけにして、いままさに世界はジェンダーフリーに向かっていると言わんばかりですが、果たしていまの日本人に本当にそのダイバーシティ(多様性)の精神が根付いているのでしょうか。
今の婚活世代のその子供達、そしてその次の世代には、少なくともジェンダーを平等とか多様性とかLGBTQとかを敢えて語ることすらないほどに当たり前の世界になっているのかもしれません。そうあって欲しいものです。
2021年9月6日
辻之内節子